発電所でつくられた電気は、送電線により高い電圧で消費地の近くまで送られ、変電所で段階的に電圧を下げた後、お客さまに届けられます。変電所で電圧を調整する変圧器の内部には、周囲の導体や大地との絶縁を確保するために絶縁油が封入されており、変圧器を屋内に設置する場合、消防法の規定により特殊消火設備が必要となっています。
※不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備

屋内変圧器イメージ図.png

<変圧器の構造と絶縁油について>

 変圧器に用いる絶縁油の種類としては鉱油が一般的でしたが、近年、環境性の高い植物油が注目されてきています。植物油は、生分解性が高く自然に分解されることから、天災等で万が一自然環境中に漏出した場合でも環境への負荷を低減でき、また、原料生産から最終の処分に至るまでのCO2排出量が鉱油に比べて約1/6に削減できるといった特徴があります。また、植物油は、鉱油と比べ引火点が高く、消防法上の指定可燃物(非危険物)であり、防災性が高いという特徴がありますが、従来の消防法では、植物油を使用する変圧器も鉱油(危険物)を使用する変圧器と同様に規制されていました。

 送配電網協議会ではこれまで、産業保安に係る様々な規制の見直しについて関係省庁へ働きかけてきました。その一環として、植物油を使用した変圧器の消火設備に係る規制見直しについて消防庁に働きかけを行った結果、2023年3月に消防庁より通知が発出され、一定の要件を満たす植物油を使用する変圧器については、特殊消火設備に代えて大型消火器を設置して差し支えないこととなりました。

 今回の規制見直しにより、消火設備に係るコスト低減効果が得られることから、今後は、環境性・安全性の優れた植物油を使用した変圧器の導入拡大につながることが期待されます。

 送配電網協議会では、今後も環境変化に応じた様々な産業保安規制の見直しを通じて、保安業務の効率化等を図り、電力の安定供給に努めてまいります。

(参考)【消防庁HP】消防予第205号 消防用設備等に係る執務資料の送付について(通知)(令和5年3月30日)